WIMPは Weakly Interacting Massive Particle の略で、日本語では「弱く相互作用する重い粒子」と呼ばれます。名前は一つの粒子を指す固有名詞ではなく、質量と相互作用の条件を満たす候補の総称です。
なぜWIMPが長く有力だったのか
初期宇宙で粒子が熱平衡にあり、膨張で反応が止まる「熱的凍結」を考えると、弱い相互作用程度の反応率を持つ安定粒子が現在の暗黒物質量に近い密度を残すことがあります。観測される密度と弱いスケールが偶然近いという動機は、WIMPミラクルと呼ばれました。
この議論は魅力的ですが、暗黒物質が熱的に生成されたこと、安定であること、標準模型と適切に結合することを仮定しています。仮定が変われば、同じ密度を作る質量や相互作用も変わります。したがって、WIMPミラクルは検出予告ではなく、探索を始める理論的理由です。
三つの探し方
- 直接探査:銀河ハローを通過するWIMPがキセノンなどの原子核を反跳させる現象を地下で待つ。XENONnTとLZはこの系統です。
- 間接探査:対消滅や崩壊で生じるガンマ線・ニュートリノ・宇宙線を天体観測で探す。ただし通常の天体現象との区別が難しい。
- 加速器:LHCなどで候補粒子を生成し、検出器から失われる運動量を手がかりにする。生成できても宇宙の暗黒物質と同一だと確認するには別の証拠が要る。
未検出結果は何を意味するか
WIMP探索で「上限」が出るとき、ある質量と相互作用モデルを仮定した場合に、観測データが許す散乱断面積の最大値を示しています。XENONnTの3.1 tonne-year解析は有意な超過を見いださず、30 GeV/c²付近でSI WIMP–核子断面積の90%信頼水準上限1.7×10−47 cm²を報告しました。
LZの4.2 tonne-year解析も標準的な核反跳WIMP探索で有意な超過を見いだしていません。これらは「WIMPが存在しない」という証明ではなく、単純な熱的WIMPの一部や特定の結合を強く制限する結果です。最新のLZ高エネルギー解析は別の反跳領域・モデルを扱うため、同じ実験から出た別の問いとして読み分けます。
ニュートリノフォグは「壁」ではなく、次の統計課題
検出器が大型・低バックグラウンドになるほど、太陽や大気のニュートリノが暗黒物質と似た核反跳を作る可能性が無視できなくなります。これをニュートリノフォグと呼びます。単純に感度が止まる境界ではなく、方向情報、エネルギースペクトル、複数検出器、異なる標的を組み合わせて背景と信号を分ける課題です。
候補の多様化を知るには、アクシオンと原始ブラックホールを、WIMPの代替候補としてではなく異なる物理を検証する窓として比べるのが適切です。