原始ブラックホール(PBH)は、恒星の一生の終わりではなく、宇宙初期の高密度なゆらぎが直接つぶれてできたブラックホールという仮説です。粒子ではありませんが、光をほとんど出さず重力を持つため、暗黒物質候補として調べられています。
PBHはどのように生まれ得るか
通常のブラックホールは恒星崩壊や合体など、後期宇宙の天体過程で形成されます。PBHでは、放射優勢期などの初期宇宙に密度ゆらぎが十分大きく、地平線内に入った領域が重力崩壊するシナリオを考えます。形成時の条件が違えば、質量分布も単一質量ではなく広がりを持ち得ます。
この自由度が、PBHの魅力であると同時に難しさです。「太陽質量のPBH」だけでなく、もっと軽い・重い領域を別々の観測で検証する必要があります。
蒸発:軽いPBHには寿命の制約がある
量子効果を考えると、十分に軽いブラックホールはホーキング放射でエネルギーを失い、宇宙年齢より前に蒸発している可能性があります。残存できる質量の下限や、蒸発時に出るガンマ線・宇宙線の量は、PBHが暗黒物質になれる割合を制約します。
ここで重要なのは、制約が「PBHというアイデア全体」を否定するのではなく、形成量と質量分布の組み合わせを狭めることです。
マイクロレンズ:通過するPBHが星を一時的に増光させる
PBHが手前の星と観測者の間を通ると、重力レンズによって背景星の明るさが時間的に変化します。暗黒物質が一様な粒子ではなくコンパクト天体である場合に使える、直感的な検証法です。OGLEやSubaru HSCなどのサーベイは、質量・距離・イベント時間の関係から、PBHの存在量を制限します。
ただし、星の数、観測 cadence、検出効率、天体の自己レンズ、PBHのクラスタリングなどをモデル化しなければなりません。最新レビューが強調するように、質量域によって適用される制約と仮定が異なります。
重力波・降着・銀河力学も別の窓
PBHが連星を作って合体すれば、重力波イベントに影響する可能性があります。大質量PBHなら、銀河の力学、星団の進化、宇宙マイクロ波背景放射への降着の影響も手がかりになります。どの観測も、PBHの質量分布・空間分布・形成時刻に依存します。
PBHは重力レンズを使う候補ですが、レンズ現象はPBHだけの専売特許ではありません。銀河や銀河団の質量地図を読む観測と、個々の星の増光を読む観測を分けて考えると、議論が整理されます。