宇宙がまだ現在の数パーセントの年齢だった時代にも、銀河はガスとブラックホールを抱えていました。Kavli IPMUが紹介したALMA研究は、赤方偏移約6、約130億光年先にある2つのクェーサー母銀河のガス運動を使い、早期のハローでダークマターが優勢だった可能性を調べています。
光らないハローをガスの速度で推定する
ALMAが測るのはダークマターそのものではなく、銀河内の電離炭素(C+)が放つスペクトル線です。線の位置が場所によって青方偏移・赤方偏移する様子から、ガスがどちら向きにどれくらい動いているかを復元します。回転曲線と、星・ガス・ブラックホールの質量モデルを組み合わせることで、銀河全体のハロー質量を推定します。
遠方銀河では、画像が小さく、ガスの分布・傾き・非円運動の仮定が結果に効きます。速度場が見えたことは重要ですが、質量割合はモデルに依存する推定値として読む必要があります。
「約60%」が意味する範囲
IPMUの発表では、2つのシステムでダークマターが総質量の約60%を占めると報告されています。これは、この2例のガス運動と質量モデルから得られた割合です。初期宇宙の全銀河が同じ比率だった、あるいはダークマターの粒子を同定した、という意味ではありません。
それでも、近傍宇宙の銀河で使われる「平坦な回転曲線とハロー」という読み方を、赤方偏移6の時代へ適用できる点に意義があります。銀河形成の早い段階で、ハローと超大質量ブラックホールがどう成長したかを考える材料になります。
超大質量ブラックホールとの関係
クェーサーは中心の超大質量ブラックホールが非常に明るく輝く銀河核です。早期宇宙で大きなブラックホールがどう成長したかは、ガス供給、星形成、ハローのポテンシャルと結びついています。今回のような回転曲線は、ブラックホールだけでなく、銀河全体の質量の舞台を同時に見せます。
観測証拠の地図の中で
近傍銀河の回転曲線はダークマターの主要証拠の一つです。重力レンズは別の質量地図を与え、Euclidの広域測量は構造が時間とともに成長した歴史を追います。ALMAの遠方ガス観測は、そこへ「銀河ができ始めた頃の運動学」を加えます。
さらに早い暗黒時代へさかのぼるには、水素21cm線のような別の観測が必要です。